小説「サークル○サークル」01-17. 「作戦」

 駅に向かう道すがら、アスカはぼんやりとシンゴのことを考える。シンゴのことは愛している、と確かに思う。けれど、顔を見たり、話したりするだけでうんざりしてしまう自分がいるのもまた事実だった。確実に自分たちの愛情は行き違い始めている。どうにかしたい。以前のように、シンゴをもっと大切に思いたい。そう思ってはみるものの、彼女は何度愛そうと思っても、感情の波に抗えずにいた。シンゴと別れて、別の男とやり直す、ということも考えてはみたけれど、いかんせん、この仕事で出会いなどあるはずもない。今更1人になることは気がひけた。今ここで別れてしまっては、今まで支えた分を損してしまう、という思いが彼女にないことがせめてもの救いだろう。
 アスカは改札を抜け、電車に乗り込むとドアの前に立ち、溜め息をついた。電車が動きだし、景色が少しずつ変わっていく。景色が変わっていくのに、気持ちは同じ場所に停留し続けている。そのもどかしさが今のアスカには耐え難かった。

Facebook にシェア
GREE にシェア
このエントリーをはてなブックマークに追加
[`evernote` not found]
[`yahoo` not found]

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です


dummy dummy dummy