小説「サークル○サークル」01-257. 「加速」

アスカはキッチンで料理をしながら、束の間の休息を楽しんでいた。
仕事から解き放たれる家で過ごす時間は、今のアスカにとって唯一ほっと出来る時間だった。
今日の夕飯は肉じゃがだ。
野菜を切って、煮込み始めると肉じゃがの匂いが鼻先をかすめた。
キッチンからリビングのソファを見ると、シンゴがくつろいでいる。
何か思い詰めた顔をしているけれど、きっと小説のことを考えているのだろう、とアスカは敢えて声をかけなかった。
シンゴは優しい。
夕飯を作ると言ったアスカに僕がやるよ、と言ってくれた。
確かに一時期、ヒサシに心を奪われていたけれど、今はヒサシと関係を持たなくて良かったと思っている。ヒサシと関係を持ってしまっていたら、シンゴに申し訳ない気持ちが勝ってしまって、きっと今一緒にいることは出来なかっただろう。
浮気なんて一時期の気の迷いだ、ということをアスカは痛感していた。
アスカは肉じゃがと味噌汁が出来上がり、シンゴの名前を呼ぶ。
はっとして笑顔で食卓テーブルにやってくるシンゴを見て、アスカは幸せを感じていた。

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