小説「サークル○サークル」01-254. 「加速」

穏やかな朝だった。
アスカの焼いてくれた鮭は美味しかったし、小松菜のおひたしもほっとする味だった。
こうして、自分の幸せが少しずつ形成されていくに従って、シンゴはこの幸せがいかに不安定なものなのかを考えた。
アスカとターゲットが続いていれば、この幸せはいずれあっという間に姿を消してしまうだろう。
こんなにも落ち着かない気持ちでいるのは、精神衛生上良くないな、と味噌汁を啜りながらシンゴは思う。
だったら、一層のこと、アスカのケータイを見てしまおうか、とも考える。そうすれば、白か黒かはっきりして、このもやのかかったような生活とはさよなら出来る。
白であれば平穏に、しかし、黒であれば、地獄が待っているような気さえした。
シンゴは思い悩む。ふとシュレディンガーの猫の話を思い出した。
箱の中に猫が入っている。開ける前は猫が生きているのか死んでいるのか、確率は50/50(フィフティー・フィフティー)だ。けれど、箱を開けてしまえば、0か100しかない。
今の状況はそれに似ているとシンゴは思った。

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