小説「サークル○サークル」01-248. 「加速」

「でも、理由って?」
「それがわからないから悩んでる」
「そこまでは聞き出せなかったの?」
「ええ。さすがに一度に全部情報を引き出すのは無理だし、危険だわ。段階を一つずつ踏まないとね」
アスカは溜め息混じりに答える。
「アスカのことは疑ってないの? 自分とターゲットを別れさせに来たんじゃないかって」
「多分、それはないと思う。そう思ってたら、自分のことペラペラ喋らないでしょ。不倫してるって自分から告白するメリットがないもの。あの子はきっと誰かに自分の苦しみをわかってもらいたかったんじゃないかなぁ」
「不倫をしてるのに、苦しみをわかってもらいたいなんて、随分勝手じゃない?」
シンゴはアスカとターゲットとの関係を思い出し、思わず感情的になる。
「そうねぇ。でも、人間なんてそんなものでしょ」
アスカはさらっと言ってのけた。
その一言にシンゴは押し黙る。
確かに勝手なのが人間だ。だけど、不倫をしているアスカにその言葉を言われるのは腹立たしかった。

Facebook にシェア
GREE にシェア
このエントリーをはてなブックマークに追加
[`evernote` not found]
[`yahoo` not found]

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です


dummy dummy dummy