小説「サークル○サークル」01-246. 「加速」

「その食事、上手くいったの?」
シンゴもミネラルウォーターを飲みながら、アスカに問う。
「多分、上手くいってると思う。彼女、自分から不倫のことを話してたし、これからどうしたいかとか何に悩んでるかも聞いたし……」
「順調そうだね。このまま、不倫相手がターゲットと別れるように仕向けられたら、この仕事も無事終わりだね」
「そうなんだけど、そう簡単にいくかなぁ」
アスカは天井を見上げた。天井の一点をぐっと睨みつけたまま、眉間に皺を寄せている。
「どうして? そこまで上手くいっているなら、問題ないんじゃないの?」
「そうなんだけど、ちょっと不安に思ってることがあってねぇ」
アスカはそこまで言うと、シンゴを見た。
「不安なことって?」
シンゴは不思議そうに問う。
「若さゆえの暴走っていのうかなぁ。若いからこそ、出来ることってあるじゃない? そういうのがありそうで不安なのよ」
「たとえば?」
「突然、奥さんのところに行って、全部ぶちまけちゃったりとか、子ども作るようにしむけて作っちゃったりとか」
「そんなことするかなぁ」
「する女なんて腐るほどいるわよ。その男が欲しいって思ったら、手段なんて選ばないってパターン、今までいくつも見てきたもの」
「それは怖いね」
「でしょ。それやられちゃうと、私たちですら、手が付けられないことがあるのよ」
「どうして?」
シンゴはミネラルウォーターを飲む手を止めて訊いた。

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