小説「サークル○サークル」01-243. 「加速」

私も年を取ったなぁ、とレナと話しながら、アスカはしみじみ思う。
「アスカさんは不倫していた彼と別れる時、辛かったですか?」
「辛かったわよ。だけど、どこかで安心もしたわ。もう周りの視線を気にしなくていいんだって。あなたにもない? 友達にも家族にも言えなくて、奥さんに見つからないようにこそこそ会う……なんて言うのかな。肩身の狭さっていうか」
「わかります……。いつもデートをする時は、この付近じゃ会えなくて。少し遠いバーに行ったり、メジャーなレジャースポットは避けたり。私は良くっても、彼が彼の奥さんとか奥さんの友達に会うかもしれないってことをとても気にしていて……」
「だったら、デートなんてしなきゃいいのにって思わなかった?」
「思いました。もっと堂々としていてよって」
レナは少し唇を尖らせ、拗ねたように言う。アスカはそんなレナを見ながら、バケットに手を伸ばした。オイルソースを絡め、口に放り込む。レナもイライラを紛らわせるように同じようにバケットを口に運んだ。

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