小説「サークル○サークル」01-239. 「加速」

「奥さんがいる人を勝手に好きになって、付き合って、それが良くないことだってわかってて……。それで辛いなんて、自分勝手ですよね……」
「そんなことないわ」
アスカはレナがそこまで考えていることに驚きながら、レナを肯定する言葉を口にした。レナに自分がレナの味方である、と思わせることがアスカにとっては大切だった。そうでなければ、心を開いて、全てを話してもらえない。全て話してもらった上で、いかにレナを不倫から脱却させるかがアスカの腕の見せ所なのだ。
「自分勝手ですよ……。奥さんに申し訳なくて……」
「ねぇ、そこまで思うのに、どうして、不倫を続けるの?」
レナが本心からその言葉を口にしているのか、それとも、イイコを演じる為に口にしているのかを見極める為に、アスカは意地悪だな、と思いながらも問う。
「私にとって、彼は大切な人で……。彼がいなかったら、私は生きていけないから……」
レナは一言一言噛み締めるように言う。レナにとって、ヒサシが必要な人であるということは、事実のようだった。

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