小説「サークル○サークル」01-238. 「加速」

「実は私……」
レナはもう一度同じ台詞を口にした。アスカはそんなレナを黙ったまま、見据えている。
レナの唇がわずかに震えている。口に出すのも憚られるのだろう。それは彼女が不倫を心の底から肯定していないことを伺わせていた。
「私、不倫しているんです」
レナは俯いたまま、言った。その表情は苦悶に満ちている。アスカはそんなレナを優しい眼差しで見つめた。
「そうなの……。もう長いの?」
アスカの言葉にレナは小さく頷いた。
「2年になります」
もう少し短いと思っていたアスカは面食らったが、レナには動揺を悟られないように僅かな微笑みを浮かべたまま、再び質問を口にした。
「彼はどんな人?」
「優しくて、大人で、紳士的で、頭の良い人です」
「そう……素敵な人なのね」
「はい……。私にはなくてはならない人です」
「でも、彼は結婚している……」
「……」
「……ごめんなさい。そんなことわかってるわよね。だから、辛いんだものね」
アスカはレナの味方であるような口振りで話を進めていった。

Facebook にシェア
GREE にシェア
このエントリーをはてなブックマークに追加
[`evernote` not found]
[`yahoo` not found]

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です


dummy dummy dummy