小説「サークル○サークル」01-236. 「加速」

 アスカはここからが勝負だと思った。レナにヒサシとのことを話させるチャンスはもうすぐそこまで来ている。ここで焦ってしまっては元も子もない。アスカは平静を装いながら、レナが話し出すのを待っていた。
「結局、その方とはどうなったんですか……?」
 レナは恐る恐るアスカに訊く。
「別れたわ」
「理由を訊いてもいいですか……?」
「えぇ、理由はね、彼の奥さんに子どもが出来たからよ」
「……!」
「そんなに驚くことじゃないわ。不倫にありがちなパターンよ。私のことを世界で一番愛してると言いながらも、しっかり奥さんともすることはしてたのよね。奥さんとは全然してないなんて言葉を信じちゃうくらい、私も純粋だったってことなのかもしれないけど」
 アスカは苦笑して見せる。そのキレイな笑い方からレナは視線を外せなかった。いずれ、自分のもこんな風に笑うのかと思うと、胸の奥が締め付けられる。
 レナはヒサシに言われた言葉を思い出し、何度も心の中で反芻した。反芻すればするほど、不安か襲い掛かってくる。気が付けば、レナの瞳には涙が浮かんでいた。

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