小説「サークル○サークル」01-235. 「加速」

「付き合ってる時は楽しかったの。奥さんのことが時々頭を過ったけれど、それでも私の方が彼に愛されている、彼には私の方がふさわしいって思ってたのよ」
「それは彼がそう言ってたから……ですか?」
 レナは遠慮がちに問う。
「ええ。彼はいつも言っていたの。君の方が可愛い。君のことを世界で一番愛してるって。でも、それは嘘だったわ」
「えっ……」
 レナの表情が一瞬にして変わる。それもそうだろう。レナは今アスカが言ったことをヒサシに言われているのだ。レナとヒサシがバーに来た時に話していた内容をアスカはこの日の為にしっかりと覚えていた。
「どうして、それが嘘だと……」
「彼は奥さんが一番大切だったのよ。私のことが一番好きだなんて、都合よく私わ繋ぎとめておく為の口実だったの」
「そんな……」
「あなたがそんな顔をすることはないわ。私がバカだったのよ。若かったから……何も知らなかったのね」
 アスカの言葉にレナの顔が次第に曇っていった。

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