小説「サークル○サークル」01-234. 「加速」

「アスカさんが不倫……ですか?」
「そう。間が差したって言うか……ううん。ただ彼のことが好きだったのね」
アスカは昔話を懐かしむように静かに語り出す。レナはその語り口に引き込まれていた。
「彼は随分と年上で私から見たらとても大人だったの。優しいし、紳士的だった」
そこでアスカは言葉を区切り、再び続けた。
「それに同世代の男の子と比べたら、お金も持っていたわ」
くすりと笑って、アスカは言う。
「同世代の男の子にはない安心感もあったし、楽しさもあった彼にハマるのにそう時間はかからなかったの」
アスカはレナの表情を伺いながら、話を進めていく。レナのどんな表情も見落とすわけにはいかなかった。
アスカはそこで一呼吸置いて、パスタを口に運んだ。オイルソースが唇につき、キラキラと光る。レナはオイルソースでキラキラと光るアスカの唇に思わずじっと見入ってしまった。
その唇から紡がれる次の言葉を待っていたのだ。
アスカはオイルソースを紙ナプキンでぬぐうと、水を一口飲み、続けた。

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