小説「サークル○サークル」01-230. 「加速」

ゆっくり色々なことを聞き出したかったアスカは、エスニック料理の店へと向かう道中では、敢えて、会話の内容を映画の話題に絞った。
アスカは映画の話をしながらも、頭ではレナに訊き出す内容をまとめ、手順を確認していた。
レナとヒサシをいかに早く別れさせるかは、アスカの腕にかかっている。今まで色々な遠回りをしてしまった分、アスカは焦っていた。
「ここよ」
エスニック料理屋のドアを開けた瞬間、アスカの背中には嫌なものが走った。
アスカの目に飛び込んで来たのは、ヒサシだったのだ。浮気相手と来ているのか、仕事で来ているのかはわからない。
けれど、こんな早い時間に仕事を抜け出してくることが出来るのだろうか。それとも、平日だというのに、休みだというのだろうか。
理由はどうあれ、ヒサシが同じ店にいるというのはまずい。幸いにも店員はまだアスカたちがやって来たことに気が付いていなかった。アスカは機転を利かせて、レナの方を振り向いた。

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