小説「サークル○サークル」01-226. 「加速」

ヒサシの周りにいる他の女と全て別れさせ、自分だけを見てもらいたい。そんな気持ちがアスカの心の片隅にはあった。
それはしたたかな独占欲だ。そして、別れさせ屋として、他の女と別れさせた後、そのしたたかな独占欲は更に強くなり、マキコとも別れさせたくなるだろう。
愛情と似て非なる独占欲はたちが悪い。アスカは映画を観ながらそう思った。
映画も中盤に差し掛かり、女同士の闘いが熾烈さを増していく。
実際にこういった闘いはあるのだろうけれど、現実には静かな闘いの方が多い。たとえば、別れさせ屋に依頼するとか、探偵に依頼するとかして、自分は直接手を下さないのだ。
直接手を下さないことにより、夫婦関係に表立った亀裂は入らない。気が付けば、夫は自分の元に戻って来て、再び穏やかな生活を何事もなかったように手に入れられる。
でも、それは結局、表向きには、というだけの話だ。波風を立てない解決は、大きく自分から色々なものを奪ったりしないけれど、心の奥底にどす黒い何かを置いて行く。

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