小説「サークル○サークル」01-214. 「加速」

マフィンが焼き上がり、そろそろ、スクランブルエッグに取りかかろうとしたところで、アスカがキッチンにやって来た。スキンケアまで終えているようで、肌はつやつやしている。ただ髪はまだ濡れていた。
「何、作ってるの?」
アスカは髪を拭きながら、シンゴに問う。
「アスカの朝食だよ。マフィンとスクランブルエッグでも、と思って」
「ありがとう。シンゴも疲れてるのに、ごめんね」
アスカはそう言って、シンゴ笑顔を向ける。シンゴがアスカの気遣いに驚くのをよそに、アスカはそのままソファに座って、髪を念入りに拭き始めた。
シンゴはアスカのやましい気持ちを少しでも緩和する為にきっと優しいのだ。そう思ってはみるものの、アスカに優しくされると、つい嬉しくなってしまうのも事実だった。
アスカの一挙手一投足に一喜一憂してしまう自分をまるで中学生みたいだな、とシンゴは内心自嘲する。
シンゴは気を取り直して、油をひいたフライパンに溶いた卵を勢いよく流し込んだ。

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