小説「サークル○サークル」01-205. 「加速」

 シンゴが菓子パンを食べ終わる頃、ユウキは漸く視線を上げた。
「どうしたらいいか、わからないんです」
 ユウキはシンゴを見て言った。シンゴはほんの少し残った菓子パンからユウキへと視線を向ける。
「優しく見守る……じゃダメなの?」
「本当なら、きっとそれが一番いいんだと思います。だけど、彼女が捨てられるのだけは嫌なんです。子どもが出来て、都合が悪くなったから、さようなら、なんてあまりにも勝手すぎます。きちんと男には責任を持ってもらいたいんです」
「なるほどね……」
 ユウキの言っていることはもっともなことだったが、シンゴは今まで聞いたり見たりしてきた事実から、それは難しいだろうな、と思っていた。
 さすがにシンゴ自身は不倫をしたことはなかったが、この年になれば、不倫をしている友達や知り合いは男女問わず、結構な数がいる。上手くやっているのは一握りで、その大半は泥沼だ。シンゴが知っている限り、妊娠問題に発展するのも決して珍しいケースではなかった。

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