小説「サークル○サークル」01-201. 「加速」

 公園にはまばらに人がいる。昼時とあってか、ベンチに座って昼食をとる人の姿も見られた。シンゴは寒さをしのぐ為、ホットカフェオレの蓋を開けた。瞬間、コーヒーのかぐわしい香りが鼻先をつく。
 口に運ぶとふんわりと珈琲の味が口の中に広がり、遅れて甘いミルクが口の中を支配した。
 シンゴはユウキに尾行の話をするつもりだった。決行は何もなければ明日する。来られるのであれば来ればいいし、来られないなら、縁がなかったと思って、諦めてもらうつもりだった。
 シンゴがカフェオレを飲み終えた頃、ユウキが走りながらやって来た。
「すみません! 遅くなりました」
 ユウキは息を切らしながら、シンゴの元へとやって来る。ユウキの吐く息は白く、一瞬にして、ユウキの顔の周りを真っ白にした。
「そんなに焦らなくて良かったのに」
「でも、お待たせしていたんで……。あ、あと、これ、どうぞ」
 そう言って、ユウキが差し出したのは、シンゴが買ったホットカフェオレだった。
「え……」
「もう飲み終わってるかな、と思って、買って来たんです」
 ユウキはそう言って、無邪気な顔で笑った。

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