小説「サークル○サークル」01-192. 「加速」

翌日、シンゴはアスカの後をつけるかどうか悩んでいた。どうにも良心が邪魔しているようだった。
公園のベンチで寒い外気に当たりながら、シンゴは遠くを見つめた。芝生の上を飼い主と犬が楽しそうに駆け回っている。のんきでいいな、と思った。
「またこんなところで考えごとですか?」
頭上から声がして、シンゴは顔を上げる。そこに立っていたのは、ユウキだった。
「ああ、君か」
シンゴは然して驚く風でもなく、淡々と言う。
「その様子だと、奥さんの浮気、解決していないみたいですね」
「意外に痛いところをついてくるね」
シンゴは苦笑する。
「シンゴさんが悩んでることは、それくらいしか知らないですから……」
「ご察知の通り、相変わらず、なんの進展もないんだ」
「あれから、尾行は続けてるんですか?」
「いや、してない」
シンゴの言葉にユウキはほっとした表情を見せた。
「最近、シンゴさんコンビニにも来なくなっちゃったし、オレが尾行に連れてってくれなんて言ったから、怒ってるのかと思ってたんです」
「そういうわけじゃないよ」
シンゴはユウキに微笑んで見せた。

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