小説「サークル○サークル」01-14. 「作戦」

「よし、これで完成っと」
 アスカは独り言を言いながら、履歴書を眺める。
「あとはこれをcrashに持っていけば、終わりね」
 彼女は下見に行った時に、crashで短期のアルバイトを募集していたのをしっかりと見ていたのだ。
「取り敢えず、洋服を着替えてこなきゃ」
 アスカは溜め息混じりにそう言うと、自転車で自分の家へと向かった。

「あれ? 早かったね」
 シンゴは洋服を着替えに戻ったアスカを見て、驚いたように言う。髪はボサボサで眠そうな目をしていた。きっと昼寝でもしていたに違いない。アスカはそんな夫の姿を見て、苛立ちを隠しきれなかった。内心舌打ちをし、彼女は夫の前を通り過ぎながら口を開いた。
「帰ってきたわけじゃないわ。着替えて、また出かけるの」
「そう。今日の夕飯は、ビーフシチューにするから、早く帰って来てね。アスカ、好きだろう?」
「今日は遅くなるかもしれないから、先に食べてて。私は帰ってきたら、温めて食べるから」
「そっか……」
 困ったような顔をして、シンゴは俯く。けれど、アスカはそんなシンゴの表情などまるで見ていなかった。彼女は仕事のことで頭がいっぱいで、それどころではなかったのだ。

Facebook にシェア
GREE にシェア
このエントリーをはてなブックマークに追加
[`evernote` not found]
[`yahoo` not found]

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です


dummy dummy dummy