小説「サークル○サークル」01-183. 「加速」

 食事を終え、シンゴは自室にこもる。仕事をする為だ。書き出しから、いくらか進んでいた。今までのアスカと自分のことを書けばいいのだ。執筆に詰まるということは特になかった。
 けれど、いつか執筆が現実に追いついてしまう。その時が問題だ。
 そして、シンゴは事実をもっと詳細に知りたいと思うようになっていた。アスカはいつからヒサシと関係を持っているのか、何がきっかけでヒサシに惚れたのか、今後、どうするつもりなのか――。
 そこまで考えて、シンゴは深い溜め息をつく。空しかった。
 原稿を書く度に訪れる悲しみとも切なさともとれる、痛みを伴った感情は、シンゴの心を蝕んでいく。
 シンゴは原稿を書く手を止めた。
 パソコンの画面の明るさがやけに眩しく感じる。
「……そうだ」
 シンゴは画面を見つめながら、ぽつりとつぶやいた。
「……もう一度すればいいんだ……」
 シンゴが思いついたのは、至極単純なことだった。
――そうだ、もう一度、尾行をすればいいんだ。
 この答えが正しいかどうか、シンゴにはまだわからなかったけれど、シンゴにはそれ以外に方法はないように思えていた。

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