小説「サークル○サークル」01-181. 「加速」

 生活をしていると特別なことよりも、日常の当たり前の出来事の方が圧倒的に多い。いかに、その当たり前の時間を一緒に過ごして楽しいかが結婚をすると大切になってくる。
 くだらないことでも話せて笑い合える方が、断然楽しい。そういうことに、シンゴは結婚してから気が付いた。
 それはシンゴ自身、一度結婚に失敗しているから気が付けたことかもしれない。
 アスカとジムの近くのパン屋の話をして、笑い合える。傍から見たらどうでもいいような、そんなことでさえ、シンゴにとっては、意味を持つ。それは相手がアスカだからだ。
 シンゴは楽しそうに話すアスカを見ながら、自分にとっての幸せや結婚を考えていた。
「手が止まってるけど……口に合わなかった?」
 アスカは心配そうにシンゴに訊く。
「いや、そんなことはないよ。とても美味しい。ちょっと考え事をしてしまっただけだよ」
「仕事のこと?」
 アスカはすかさず問う。
「ああ」
 シンゴは誤魔化す為に嘘をつく。
 アスカのことを考えていたとは、さすがに言えなかった。

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