小説「サークル○サークル」01-169. 「加速」

 食事が半分くらい済んだ頃、シンゴは思い出したかのように口を開いた。
「頼まれてたプロフィール、出来たよ」
「ホントに?」
 アスカは驚く。パスタを巻く手を止め、空いている左手を口元に持っていく。そのしぐさの端々に嬉しさが見え隠れしていた。
「こんなに早く出来るなんて、思っても見なかったわ」
「あのくらいなら、そんなに時間はかからないよ。食事が終わったら、確認して。一応、アスカの基本的な部分は変更せずに情報を付け足した形を取ったから、多分、無理なく、使えると思う」
「ありがとう。あとは私がしっかり設定を覚えて、レナに接触して、ターゲットと別れさせればOKってことね」
 アスカはフォークにパスタを巻き直しながら言う。
「そうだね。でも、大丈夫なの?」
「何が?」
 アスカは不思議そうにシンゴの顔を見た。
「オフィスビルのカフェってことは、ターゲットとアスカが鉢合わせることもあるんじゃない?」
「それは大丈夫よ。時間をずらして行くから。私は朝の混雑時間と昼の混雑時間の間に行くつもり。テイクアウトじゃ印象に残らないから、お店で一杯飲んで出てこうかなって」
「でも、それっておかしくない?」
「なんで?」
「会社の就業時刻って、どこも大抵同じだし、昼休憩だって大した差はないはずだよ。なのに、どうして、アスカだけそんな時間に来られるんだろうって疑問が出て来ると思う」
「言われてみれば……」
 アスカは眉間に皺を寄せて、頬杖をついた。

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