小説「サークル○サークル」01-147. 「加速」

 アスカは最近のシンゴの様子を見ていて、違和感を覚えていた。それが小説の仕事を始めたことによるストレスからなのであれば、仕方ないと思う。しかし、もしその原因が自分にあるのだとしたら、解決すべきことだとも思っていた。
 兎に角、シンゴがどこかよそよそしいのだ。
 アスカはバーでグラスを拭きながら、ぼんやりと夫婦について考える。
 一緒に住んでいるというだけで、夫婦と呼べるならば、それは今のアスカとシンゴの状態から逸脱することはない。けれど、愛し合って、一緒に暮らしているのが夫婦とするならば、いささか今の二人の関係は違うような気がした。
 そもそも、セックスをしなくなって、随分と経つ。シンゴは元々積極的な方ではなかったから、そんなに回数が多いわけではなかった。けれど、全くしなくなるには、まだ早い。
 求められなければ、なんだか自分が女であることを忘れてしまいそうだったし、女としてシンゴに認識されていないような気さえした。
 そう思ってしまう状況は嫌だけれど、だからと言って、自ら打破しようとしているわけでもなかった。どこか受け身な自分にアスカは溜め息をつく。

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