小説「サークル○サークル」01-142. 「加速」

「なんだい?」
 シンゴはユウキのただならぬ雰囲気に押されながら、問いかける。ユウキの口から飛び出た言葉はシンゴが予想もしていなかった言葉だった。
「今度、尾行する時は俺も連れていって下さい!」
「えっ」
 突然のユウキの申し出にシンゴは面食らった。ユウキの言葉の真意がわからない。
「ダメですか?」
「ダメってわけじゃないけど……。尾行を続けるかどうか迷ってるんだ」
「どうしてですか?」
「何度も妻の浮気現場を見ても、正直へこむだけだからね」
「まぁ、確かに……」
「そういうわけだから、期待しないでいてもらえるとありがたいかな」
「ってことは、尾行する時は声をかけてもらえるってことですか!?」
「あぁ、結構、ハードだけど、それでいいなら」
「ありがとうございます!」
 ユウキは満面の笑みで答えた。どうして、そこまでシンゴの尾行に同行したいのかわからなかったが、シンゴはその理由を聞こうともしなかったし、知りたいとも思わなかった。それよりも、一人であの妙なプレッシャーに耐えなくていいんだ、と思うことがシンゴをほっとさせていた。

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