小説「サークル○サークル」01-134. 「加速」

 それからしばらくの間、シンゴはアスカの尾行を続けた。けれど、あれ以来、ヒサシがアスカを強引に口説こうとするシーンに出くわしたことはなかった。アスカはシンゴの仕事の依頼の話を聞いてから、ずっと上機嫌だったし、何も不安に思うことなどないような気もしていた。けれど、現実はそんなに甘くない。シンゴは自分の目に飛び込んできた光景を見て、息を飲んだ。
 ヒサシが店から出て来るのと同時にアスカも出て来る。店はまだ閉店の時間ではない。見送りかと思ったけれど、様子がおかしい。アスカがコートを着ているのだ。
 ヒサシとアスカは仲良さそうに並んで店を出ると、繁華街の奥へと消えていく。
 嘘だろ……? とシンゴは思った。慌てて、自転車に乗って、二人の消えていった方向へとひた走る。
 二人の後ろ姿を見つけ、自転車を路肩へ止めると、気付かれないように後をつけた。
 シンゴの祈るような思いとは裏腹に、二人はホテルの前で立ち止まると、辺りを確認しながら、ホテルの中へと入っていった。

Facebook にシェア
GREE にシェア
このエントリーをはてなブックマークに追加
[`evernote` not found]
[`yahoo` not found]

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です


dummy dummy dummy