小説「サークル○サークル」01-120. 「加速」

 アスカは悩んでいた。マキコから依頼の再開を告げられたのは嬉しかったし、安心もした。けれど、どこかもやもやとした感情がお腹の下の方で渦巻いているのを感じていた。なんとも言えない嫌な感じだ。
 煙草に火をつけ、くゆらす。吐き出した煙はしばし空気に滞留して、ふわりと消えた。机の上に足を上げ、天井を見上げる。浮かぶのはヒサシの顔だ。思わず、目を伏せた。自分の感情が上手くコントロール出来ないことに苛立ちを感じながらも、アスカにはどうすることも出来なかった。
 ヒサシを不倫相手と別れさせるのが、アスカの仕事だ。けれど、別れさせれば、ヒサシはマキコの元に戻るだろう。子どもがいるのなら、尚更だ。アスカのつけいる隙はない。だいたい、アスカだって結婚をしていて、シンゴがいる。それでも、ヒサシに心惹かれてしまう自分に溜め息をついた。
 理屈では割り切れない。だから、人は恋をするのだ、と誰かが言っていたのを思い出していた。

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