小説「サークル○サークル」01-92. 「加速」

「どうぞ、こちらに」
 アスカは気まずそうに俯いているマキコに言った。
 マキコは言われるがまま、ソファへと腰をかける。アスカは紅茶を淹れる準備を始めていた。お湯を茶葉の入ったポットに注ぎ、アスカはきっかり三分待つと、ティーカップへと注ぐ。もらい物のクッキーを添えて、コーヒーテーブルの上に静かに置いた。
「どうぞ、召し上がって」
 アスカはマキコに勧めながら、自分も紅茶に口をつける。マキコはカップの中が赤い色をしていることに少し驚いたような顔をする。それを見たアスカがすかさず、「ルイボスティーよ」と言った。マキコはアスカを上目遣いで見上げ、小さく頷くと、再びカップの中身へと視線を落とした。
「大丈夫よ、ノンカフェインだから。身体にも優しいわ」
 アスカの言葉にマキコはほっとした表情を浮かべる。お腹の子どものことが気になっていたのだろう。マキコは紅茶を口にした。
 アスカはそんなマキコを見て、ふいにヒサシとのキスが脳裏を過ぎった。アスカは平静を装う為に、もう一度紅茶に口をつけた。

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