小説「サークル○サークル」01-90. 「動揺」

 一体、どうやって、アスカの気持ちを取り戻そうか。シンゴはいつになく頭を使っていた。こんなに頭を使うのは、久々だと思った。それは普段小説を書くことにそこまで力を注いでいないということを意味していた。そんな自分の怠惰さに呆れながらも、シンゴは久々に懸命に思考を巡らせた。自分の妻を取られるわけにはいかない。
 アスカは明らかにターゲットに恋焦がれている。では、どうすれば、その恋は終わるのだろうか。それは簡単なことだ。ターゲットが元の鞘に収まればいいのだ。ふらふらとしている男が自分の戻るべき場所に戻れば、アスカを振り向くことはない。自分を振り向かない男に大抵の女は愛想を尽かすはずだ。
 実際、アスカは本当にターゲットを愛しているのだろうか。その点にも疑問が残る。普段は感じることの出来ないトキメキをターゲットがほんの少しアスカに与えただけなのではないだろうか。そう、錯覚だ。きっとアスカはほんの少しのトキメキを恋だと錯覚しているに違いない。
 不倫をするような男だ。アスカにだって、言葉巧みに近寄って来たのだろう。アスカはああ見えて、意外に純粋で恋愛経験が少ない。シンゴもそんなに多い方ではなかったが、アスカより恋愛経験がある自信はあった。
 ここはやっぱり――そこまで考えて、シンゴは一つ大きく頷いた。
 彼にはこの勝負に勝つ為の作戦があった。

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