小説「サークル○サークル」01-89. 「動揺」

「お風呂に入ってくる」
 アスカは食事を終えると、そう言って立ち上がった。食器を持って、キッチンへ行こうとする彼女を「僕が片付けておくよ」とシンゴが制した。アスカは「ありがとう」と言って、風呂場へと消えていく。その後ろ姿が完全に見えなくなったところで、シンゴは大きく溜め息をついた。
 アスカの様子がおかしいことは一目瞭然だった。シンゴにはだいたい想像がついていた。例のターゲットと何かあったのだ。アスカから他の男の匂いがしていなかったことや、ボディソープの香りがしていなかったことを考えると、男女の関係になった、ということは考えづらい。けれど、キスくらいならしていてもおかしくないだろう、とシンゴは踏んでいた。アスカが風呂からあがったタイミングで問いただすことも出来るが、それは得策でないということをシンゴはわかっている。アスカは頑なに否定するだけだ。シンゴはアスカに白を切りとおしてほしいわけではない。アスカの恋を阻止したいのだ。その為には作戦を練る必要がある。シンゴは覚悟を決めると、一つ大きく頷いた。

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