小説「サークル○サークル」01-86. 「動揺」

「あれ? 今、帰って来たの?」
 アスカは突如現れたシンゴに驚き、顔を上げる。
「お醤油、かけ過ぎじゃない?」
 寝ぼけ眼でシンゴはアスカに言った。アスカは手に持った醤油差しに目を向けると、すでに小松菜は黒い液体に浸かっていた。
「あーあ。それじゃあ、食べられないくらい辛くなってるだろうね。器換えるから待ってて」
 シンゴはそう言って、キッチンへと消える。アスカは今日のヒサシとの一件で自分が少しぼーっとしているのかもしれない、と思った。
「アスカ、お味噌汁って温めた?」
「ううん。温めてない」
 キッチンから別の器を持って来たシンゴは、小松菜のおひたしを新しい器に入れ直しながら問う。
「やっぱりね。電子レンジを使った形跡がなかったから。今、温めて来るよ」
 そう言って、シンゴは新しい器に入った小松菜のおひたしをアスカの前に置くと、味噌汁の入ったお椀を持って、再びキッチンへと向かった。
 アスカはシンゴが戻ってくるまでの間、ただただ食事を見つめていた。

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