小説「サークル○サークル」01-430. 「加速」

「そうですか。わかりました。きっと一時的なものだと思いますよ」
「だといいんですが……」
「少なくとも、不倫相手の方はもう元に戻ることは望んでいません。むしろ、あなたに申し訳なく思っている、と言っていました」
「……」
マキコが黙ったのを見て、アスカは余計なことを言ってしまったな、と思った。
いくら、不倫相手が奥さんに対して申し訳ないと思ったところで、不倫をしていることには変わりはなく、申し訳なく思うくらいなら、不倫なんてするな、というのが妻の立場からの意見だろう。

全ての話が終わった後、マキコを送り出すと、アスカは大きな溜め息をついた。
アスカに残るのは疑問だ。
マキコはどうしてヒサシに気が付かなかった、なんて言うのだろう。アスカはその場にいた、と話したのだ。それにも関わらず、気が付かなかった、と言うことになんの意味もないはずだ。
アスカは別に弁護士ではない。
アスカにマキコの不倫を知られたからと言って、仮に離婚調停が始まっても何か不都合があるとは思えなかった。


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