小説「サークル○サークル」01-407. 「加速」

「レナは不幸せになっていますよ」
ユウキの言葉にヒサシの眉が片方だけ上がったように見えた。
「どうして、あなたがそんなことを言い切れるんですか? 彼女に聞いたとでも?」
「聞かなくてもわかります。僕は彼女と子どもの時からの付き合いなんです。彼女を見ていれば、今が幸せなのか、不幸せなのか、わかりますよ」
ヒサシはユウキの言葉を鼻で笑った。
「本人に聞きもしないで、幸せか不幸せかわかる? なんの為に言葉があると思ってるんですか? 言葉で確認しないことには真実はわからないでしょう」
「時として、言葉が嘘をつくことをあなたは知らないんですね」
「……」
ユウキの言葉にヒサシは口を閉ざした。
まさか、ユウキからそんな言葉が飛び出すとは思っていなかったのだろう。
「きっとレナはあなたに“幸せか?”と訊かれたら、幸せだと答えるでしょう。恋人に幸せか? と訊かれて、不幸せだと答えるほど、彼女は無神経ではないですから」
アスカはユウキの饒舌さにただただ感心するばかりだった。


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